2015-02-01から1ヶ月間の記事一覧

二月尽

昨年の二月は雪掻きに明け暮れた気がしたが、今年の我家の庭の二月はこびりついているような残雪があるばかりだ。北海道も函館周辺だけかもしれないが。 時折の日差しに誘われて外に出てみると意外に風は冷たい。 二月尽日足らぬ庭の小花たち 未曉

先日、外においてある車がずいぶん汚れたなぁーと思っていたら、黄砂が降ったと報道された。 入院していた高校生のころ、三国志や水滸伝を愛読書と言って憚らなかった私にとって、今降ってくる黄砂も、かの英雄豪傑が巻き起こした黄塵の余塵に他ならない。 …

未曉句集(二)の六

おのおのが今立つところ冬の果 未曉 年齢とともに冬は体力的にも精神的にも峠感が強くなる。2月は亡くなる高齢者が多いと聞く。 雪間が増え広がり、日差しが長くなり春が現実的に感じられるようになったとき、ふと足元を見れば目を見開き肩怒らせてまだ寒さ…

雪の果

また雪が戻ってきた。戻り雪という季語はない。歳時記にある「雪の果」とか「名残の雪」とか「終雪」などという季語には雪を惜しむ情感が強い。言葉として広辞苑にもないことに驚いたが、一度消えた雪がまた降ってくると、冬に戻っていくようで北国、雪国に…

雛祭り

日本海の水平線が見える島牧小中学校の家庭科室の奥の和室、古色のお雛様が飾られた。四年生二十四人のくったくのない笑顔が思い出される。金堀小学校では図書室のカウンターを利用してあちこちほころびのあるひな壇が作られたその前で自習の子どもの読書の…

雛祭り

お雛様を飾った。亡き両親が我が家の孫娘に買ってくれたケースに入った内裏雛である。ケースごと出して入っていた箱に毛氈代わりの布を着せた上に置くだけである。電源につなぐと雪洞に明かりが灯り回り灯籠が紅梅の模様を通して光を動かす。それでたちまち…

春一番

南の方に春一番が吹いたそうだ。報せだけだが北国にも届いた。こんなことにも心が動くのは冬の厳しさが体力にも心情にも堪えるようになっていることを思わざるを得ない。 春一番勝者生意気許されて 未曉

息白し

このノートパソコン越しの窓を横切って、今は北斗市まで伸びている高規格道路の高架がある。その下に当然のように立派な舗装歩道のある副道も添っているが、この副道はJR函館線で行き止まりになっている。だから誰も通らないし税金の無駄遣いを露呈している…

残雪

消えたはずの雪が、先日の大雪が残り春の陽気の中に雪景色を呈している。家裏に雪の小山があちらこちらに残っているがそこで遊ぶ子どもはいない。この二三日の暖かさの所為か「そのうち解けるだろう」ということのようだ。 疎まれず遊ばれもせず雪残る 未曉

春風

帆立貝をいただいた。 帆立貝合掌のごと刃を拒み 未曉 と一句できたが念のため調べたら帆立貝は鮑などと共に夏の季語だった。今は養殖が中心で年中採れるから季節感が薄れているのだろう。じっと見ていたらぽかんと口を開け、そこから陸の様子を眺め、春の風…

湯豆腐

湯豆腐の箸につかめぬ昭和かな 未曉 味噌汁に余した豆腐があれば晩酌は湯豆腐になる。だしの素と麺つゆ、ネギを刻めば出来上がる。そして伴って思い出される昭和を肴に飲むことになる。隣が豆腐屋だったから湯豆腐は子供の頃の夕食の定番だった。箸使いが下…

咳く

咳けば胸に虚ろな洞のあり 未曉 昔結核で入院していた頃、咳は病気と直結していたから今でも咳をすると反射のように自分の胸の奥を想像してしまう。 結核は重くなると肺の結核菌に侵されたところは空洞化すると聞かされていた。幸い私は結核菌が感染した初期…

マスク

いつもほど近寄れなくてマスクかな 未曉 この頃のマスクは大きくて表情も見えないから会話が遠い。話すときはマスクを取るのがエチケットだったがインフルエンザや何とかウイルスやら見つからなかったものが見つかり、また他人からもらうだけでなく自分が他…

ラグビー

動かざる空やラガー等組みほぐれ 未曉 流れるようなバックスへの展開もいいが、鮮やかなタックルから体に隠れたボールの争奪戦、そしてたターンオーバー、休みなしに展開するラグビーの試合が観るスポーツでは最も好きだ。一月から2月は毎日曜日に試合中継…

手袋

美しき革手袋に皺の指 未曉 幼いころ頃私は物忘れのはげしい子どもだった。学用品はもちろんランドセル、靴袋、帽子等など。そして何処に忘れたかも忘れているからそれらは戻ってくることが少なかった。学生帽子などは幾つ忘れて幾つ失くしたことか。母は怒…

未曉句集(二)の五

散る鱗零るる腹子鰊割く 店先に姿を見ると多少高くてもどうしても食べたくなる魚が秋刀魚と鰊である。中でも鰊は生を焼いてたっぷりの大根おろしと多めの醤油で「美味い」と何度も口に出てしまうほど好きである。鱗の強い鰊を流しの中で捌きながら、早く食べ…

未曉句集(二)の四

雪降る降る籠城といふ戦あり 雪が降れば掻かなければならない。玄関先に雪が積もったままというのは見窄らしい。我が家につながる町内の道も雪掻きをしないままでは隣近所に申し訳ない。つい少し前までは「運動不足解消さ!」などと言っていた手前もある。 …

未曉句集(二)の三

己つつむごとく手に受く寒卵 卵が高価だった昔、結核だった母のために卵を得ようと父が手をつくしたり、鶏を飼ったりした。それでときどき我が家に母のための卵があった。腹をすかした食べ盛りの子どもには「なまじ無いほうがいいもの」という記憶がある。 …

未曉句集(二)の二

馬鹿塗りの箸が我が箸雑煮餅 俳句を始めて間もない頃句会に塗り箸で餅を食べる句が出され「それはおかしい。餅を食べるときは割り箸だろう」という人がいた。たしかにそれはそうだが俳句の感想にもなっていないし、そのおかしみを句にしたのだから当たらない…

未曉句集(二)の一

矢を放ち少女一礼初山河 数年前椴法華の妻の実家で年越しをし、翌朝恵山岬の初日を詣でた。道着に袴姿の少女が一人弓を携えて立っている。函館の高校の弓道部で頑張っている子らしい。これから初日に向かって弓を引くという。 群れている高校生を見慣れてい…

未曉句集1

未曉句集二が出来た。後書きに「好きな自句の 暇つぶしの絵の 手製本の…」と書いた。B7版35頁の手作り句集である。パソコンの季語閑語フォルダに死屍累々たる駄句の中から取り出しておきたい句を集めただけである。自己満足の塊である。中には添削された…

囀り

プリンターのインクが無くなり、いつもの散歩より少しロングウォークになるが、穏やかな天気も今日あたりで終わりだろうと電気屋まで歩いて行くことにした。いつものスパイク付きの靴ではなくウォーキングシューズにした。歩道に雪がない国道を歩くことにな…

日脚伸ぶ

まず、車で出かけたついでに青柳町まで足を伸ばして買ってくる油揚げをサッと炙る。たくさんもらった長葱を刻んで薄めためんつゆをかけレンジで1分ほど温める。少し焦げ目のついた油揚げを一口大に切り、刻みネギの器に盛って晩酌の肴ができる。若しくは切…

久しぶりのような気がしてすっきりとした青空を好ましく見ていたら突然凧を思い出した。立体凧である。昔教材に凧揚げを思いついて調べている内に教材化そっちのけで面白くなり、立体凧を作ってしまったことがある。安定感があり、直方体の風情も何も無い凧…

立春

冬は後藤さんの殺害で終わり、春は人質のパイロットの殺害映像で立ち上がった。暦では…。そして小さなマッチで火を点けた人が、その火を消さねばならぬとポンプ車どころか洪水が必要だと言い出した。 立春の薄ら寒さや日本島 未曉 歴史は戻らないが時として…

寒見舞

お見舞いいただく程の寒さを感じなかった「寒」が明けようとしている。実感としての季と暦の上の季と与えられた時の季とのズレの中で俳句など考えていると肝心の実感までが心もとなくなってくる。 寒見舞余白に草のいろ仄と 未曉

一月尽

後藤さんの殺害という悲報で一月が終わった。 年齢とともにあっという間の一と月あっという間の一年だがこの一月だけはすこしながく感じた。年が改まるということもあり色々と考えたり感慨を伴って過ごすことが多かったからなのだろうか。 たかが一月尽され…