手袋

    美しき革手袋に皺の指  未曉
 幼いころ頃私は物忘れのはげしい子どもだった。学用品はもちろんランドセル、靴袋、帽子等など。そして何処に忘れたかも忘れているからそれらは戻ってくることが少なかった。学生帽子などは幾つ忘れて幾つ失くしたことか。母は怒ることを越して呆れてしまっていた。だから私の手袋は右手と左手が上着の右袖から肩、左袖を通る長い紐で繋がれていた。母の手編みのボッコ手袋だった。さんざん遊んだ後、赤く冷たくなった両手を首につけたり息を吹きかけ吹きかけ温めて帰る道、両方の袖口から雪がこびりついた凍った手袋がぶらさがって揺れていた。