未曉句集(二)の三

  己つつむごとく手に受く寒卵  
 卵が高価だった昔、結核だった母のために卵を得ようと父が手をつくしたり、鶏を飼ったりした。それでときどき我が家に母のための卵があった。腹をすかした食べ盛りの子どもには「なまじ無いほうがいいもの」という記憶がある。
 そんなことも含めて卵には存在感がある。きっとそこに命の存在を感じるからだろう。寒中であればスーパーの卵も置かれ方や置かれている状況で存在感のある寒卵になる。