未曉句集(二)の一

  矢を放ち少女一礼初山河   
 数年前椴法華の妻の実家で年越しをし、翌朝恵山岬の初日を詣でた。道着に袴姿の少女が一人弓を携えて立っている。函館の高校の弓道部で頑張っている子らしい。これから初日に向かって弓を引くという。
 群れている高校生を見慣れているせいか、一人で岬の寒風に立っている姿は健気で初々しい。あいにく水平線上には雲がありぐずついた初日になったが彼女の放った矢は、弦鳴りの音とともに恵山岬の崖下に放たれた.
恵山も新しい山に見えた。
 季語から言えば「弓始」なのだろうが、少女の矢が切り裂いた「初山河」の句にした。