桂岳・花のトラヴァース

 亀川の左岸の尾根を登り詰めると送電線の鉄塔があり、向かい側の尾根が傾斜を緩めた辺りに立っている鉄塔と送電線で結ばれている。ここから亀川を挟む二つの尾根が桂岳の山塊にぶつかる源頭部のトラヴァース路を行く。
 送電線は尾根と尾根の間を弛み無くしっかり張られているがその下のトラヴァース路はたわむように一度ゆっくり下がって行く。それまでの尾根道は狭かったり、林内だったりで花は少なかったが、ここで一気に花が目に飛び込んできた。


 登山口の所にしかなかったキスミレが、斜面から零れるように道咲き掛かり、道端から下の斜面に落ちてゆく。その次は水色紫のグラデーションで斜面を装おうエゾエンゴサクの散らばり、間を埋めるようにカタクリの赤紫や意イチリンソウの白い花びらが風に震えている。ニリンソウ、ノウゴイチゴ、エンレイソウも数は少ないけれどアクセントのように飽きさせない。たわんだ道が再び上り始めると、シラネアオイガゆったりと風に揺れ、大きなスミレの薄青紫の大きな株が急勾配の目の前にあった。
 僅か500M位のトラヴァース路だけれど、酔うような道が桂岳の中腹にある。