三枚岳・山容(1)

 1975年あれも四月、島牧から椴法華に異動したときから30年、何回通っただろう。亀尾、鉄山、峨眉野そして尻岸内への山道。今日三枚岳へ向かう中で気がついたことがある。これだけ林道の入り口がありながら、ただの1Mもそこに立ち入ったことが無かったことである。山が好きだとか毎週山歩きをしているとか言ってもこの程度である。一人では初めてのところへ入り込めないし、その気すら起こせないのである。
 三枚岳への入り口は、峠を恵山側に少し降りたカーブにあった。閉められたことが無いような錆びたゲートを通り、急勾配を林道の立派さに誘われて車で登って行く。Yamaさんはあのゲートから歩くつもりだったらしかったが、1Kmくらい車で行き、残雪が道の見え始めたところで「歩きに来たんだから…」ということで車をおりた。山菜採りらしい車が我々の横を登って行った。
 そのまま林道を歩いた。ナニワズの黄色と道端の蕗の薹の黄緑が春である。散歩気分である。背中のスノーシューを使うだけの雪は無いようだ。夏道がついていない三枚岳は雁皮北尾根のようなスノーシュートレッキングの醍醐味を味わえる行程にはならないようだ。尾根殻のルートは薮漕ぎの連続になりそうだった。北斜面に回りこみ、浅い沢に残っている雪斜面をつぼ足で登ることにした。地図を読んでいたYamaさんが「直登したあたりが頂上だと思う」という。
 しっかり足を支えてくれる雪面と、抜けるように足を落とし込む所がある。無駄な努力とは思いつつそぉ〜っと足を下ろし、片方の足を持ち上げるためにまたそぉ〜っとふんばったとたん、スポンと音を立てるように足が沈むとがっかりする。大きなストレスである。私の体重では無駄だと知りつつまたそぉ〜っと足を置くそして…またストレスを溜める。途中で、ストックが邪魔になる。笹竹が雪の上に顔を出しているところは引っかかってしょうがない。置いていこうかとも考えたが、山頂で下るルートが見つかればこのストックのために戻るのもいやなので我慢して引っ掛かったのをはずしながら登った。苦労したけれど楽しめた。距離にして5〜60mと短かったし、今日はこれまで楽な林道歩きだったので楽しく感じられたのかもしれない。
 頂上は尾根が平らになっていて、その南東端と北西端で180度づつ展望を楽しむ感じだった。へその方向に函館山当別丸山、背中に恵山がある。恵山の前の海向山がここ三枚岳からは立ちはだかるように見える。