八甲田(1)赤倉岳へ

 いつもの山歩きの脚を今回初めて青森まで伸ばした。遂にしょっぱい川を渡ったのである。
 朝3時のフェリーに乗船、まづ1〜3缶のビールで出陣の祝杯。1時間くらいの睡眠が取れただろうか。6時前には起きて腹ごしらえ、待たしておいたタクシーで青森駅。そこからJRバスで八甲田ロープウエイで田茂萢山頂駅へ着いたのが9時20分頃。道内は自家用車の移動なので、乗り継ぎは面白いが疲れる。ロープウエイからの田茂萢岳山麓かに広がる紅葉の海はすばらしいものがあった。
 今日の山行は山頂駅〜赤倉岳〜井戸岳〜大嶽〜酸ヶ湯の縦走である。

 たくさんの観光客、登山客の混雑から抜け出すように歩き出した。田茂萢湿原の木道を歩く。高低差もないしめぼしい写真対象が少ないせいか会長に歩く。それでも追い越される。この辺りはアオモリトドマツの緑を目立たせて枯野が広がっている。広葉樹がないので紅葉も少ない。アオモリトドマツの樹林帯を抜けるとハイマツが中心となり、展望が開ける。そして赤倉岳への厳しい直登が始まる。それも私の嫌いな階段路である。踏み出す前に振り返る。登ってきた路がロープウエイの山頂駅に繋がり、北には白っぽく霞んで青森市街、そして陸奥湾。南には大嶽と南八甲田野山山が連なっている。前を向く頂上への階段路に登山者が連なっている。さすが本州の山、さすが紅葉シーズン、さすが八甲田と言うべきだろう。段差の高さが一段ごとに違うのでリズムがとれない。「登ってしまうから…」というリーダーの声。そう言えば陸奥湾の方から黒っぽい雲が迫ってくる。ピークが近づくにつれて風も強くなってくる。
 やっとたどり着いたピークは強風のふきっさらし。先に着いた者から四方を眺め1,2枚の写真を撮ってそそくさと逃げるように次の路を辿る。私も山頂駅でヤッケを着ていたが風圧が寒さを伴って身体に感じられる。身体も手もゆれてピントが定まらない。吾々もそこを後にする。赤倉岳井戸岳への尾根は大きな火口の外輪山である。高低差はないがロープで守られた尾根路を強風にさらされてやっとピークに着いた。井戸岳かと思ったがそこが赤倉山頂だった。先ほどのピークにあった「赤倉岳。1548M」の表示板に騙されてしまった。高さはそれほど変わらない。ここには先着の人たちはすでにいなかった。
厳しい登りで着いた先刻のピークの方が感激が強かったのかもしれない。