春暁

三回ほどネパールをトレッキングで訪れている。エヴェレスト街道のトレッキングのときトレッキング前にガイドの提案でカトマンズ近郊の古都バクタプルを観光した。暗い内にホテルを出発し、バクタプルに着いた時はようやく空が白み始めた頃だった。寺院は壁を作る煉瓦がその色も一つ一つの並びもまだ黒い陰で、白み始めた空に輪郭だけである。どこに入れるわけでも無し、ネパールの古都の雰囲気を満喫しながら歩いていると、あちらこちらにバターランプの灯が点り始めた。女性がお盆にバターランプと供物を載せ家の庭の決まった場所に供え廻っている。毎朝の行いらしい。熱心な信仰の小さな灯しの点在と女性の眉間の赤い点が美しかった。

     バクタプル

 春暁やバターランプに尽きる闇   未曉