山道楽115=アンナプルナ・ダウラギリ展望トレッキング(4)

takasare2007-04-04

[山道楽]アンナプルナダウラギリ展望トレッキング(4)
  4/2 チャンドラコット〜シャウリバザール〜ガンドルン(後)
 汗まみれになってガンドルンのゲートをくぐった。それからもシェルパのゲル君は、三十段ほどの急勾配の石段を登り、くねくねと集落の中を抜けて行く。惰性で足を前に出しているような歩き方でついていった。やっとゲル君が入っていったのは、ネパールの山の中には珍しく、塀が囲み、扉がついている入り口が有る庭だった。そこから芝生に囲まれ細い花壇と敷石が配されたアプローチがピンクと白の三階建ての建物に続いていた。昨日ポカラまでの飛行機で一緒だった一行が一回のラウンジでもうすでにくつろいでいた。我々はその奥に陣取り、いつもの甘い飲み物で今日の長い歩きから開放された。
 部屋に行ってびっくりした。各部屋にタイル張りのバス、トイレが付いていた。シャワーが使えるという。早朝の下痢と3リットル近い水でかいた汗で不快だったので、冷たくてもいいと思い、先にシャワーを使わせてもらった。お湯は太陽熱で温める方式らしかったが、十分な温度だった。他の人達も使うことだし、手早く済ませた。それでも下着を全部着替えるとさっぱりした。風は挽きたくないので、フリースを来てオーバーズボンを履き、毛糸の帽子を被ってロビーに下りていったら笑われた。でも熱くはなかったし、頭がぬれていると風を挽きやすいのでそのまま過ごした。夕食前、アンナプルナが見えそうだったが、まとわりついた雲がはなれず全貌は明朝までお預けとなった。
 夕食は大きな芋や人参が入ったこくまろカレー、ソースがかかったモモ。つけもの、ポップコーン。大量の汗と大量に補給した水分で腹が復調してきている。完食した。用心のためよく噛んで食べ、腸の薬を飲んだ。
 20時頃から一軒の家にみんなが集まって歌や踊りを見せてくれるらしい。道路整備などの費用などを寄付してもらうためのも催しものらしい。ヘッドランプをつけてYaさんSaさんツアーリーダー道案内役のシェルパ数人と観に行った。折角登ってきたのにどんどん下がる。ガンドルンは住んでいる人が多そうだ。家が建て込んでいて、路地が曲がりくねっているので帰りは一人では無理だ。日中あれだけ暑かったのに涼しい。フリースの上にシェルを羽織ってちょうどよかった。
 私たちは踊りの広場の正面に正賓扱いで席を作られ途中で帰れるような雰囲気で無くなった。裸電球が点され、ござの上に太鼓とアコーディオンのような楽器が用意された。そして村の女性が身を寄せ合うようにすわり,太鼓が促すように打たれるとメロディーが流れ高い女声のネパール民謡が谷間の暗i霞に吸い込まれていった。民族衣装に裸足の娘が腰と指先を使って踊り始める。手拍子と歓声、きっと高いところから見たら、大きな山の中の一つの点にしか過ぎないこの広場が闇に浮いているだろう。そしていつの間にかアンナプルナ・サウスがこれまた月明かりに照らされて薄いピンクに染まって見守っているかのように中空に浮かんでいる。踊りを見ながら何度も振り返ってみた。
 この景色には「神」が存在する。ここで毎晩のようにこの景色を見て暮らしていたら、この美しさと比較する美しさを知らない人々は、「神」を感じざるを得ないと思う。私はネパールの人々の信仰心は貧しさによるものと思っていたが、この大いなる自然と対話するしかない人間は自分たちの言葉では言い表せない力を感じたのだろう。言葉で表現できたのはきっと祈ることだけだったのだろう。
 100RPを寄付盆において辞した。帰りは思った以上の登りで軽く汗をかいてしまった。ロッジの部屋に戻るとKoさんはもう寝ていた。静かに寝袋に入り目を閉じた。耳にまだネパール民謡を謡う女声が残っていた。
  晩霞ぬうネパール民謡女声    未曉