雪五尺

 よく知られた小林一茶の句に「是がまあつひの栖か雪五尺」というのがある。一茶は越後に近い故郷信州柏原で逆境の晩年を過ごした。信州柏原は豪雪地帯でもある。一時俳諧師をめざして暮らした江戸のことも頭の隅にありながら郷里に埋もれていくしかない一茶の諦観の句でもある。五尺の雪は人生を閉じ込め埋もれさす深さや重苦しさを感じさせるが、同時に故郷に積もる五尺の雪は「是がまあ」という程度にしろ我が家をそして人生を含めた己を抱いてくれる包容力を感じさせる。「是がまあ」は自分を見定めた詠嘆でもあろう。雪五尺に暖かさを感じ、一茶の自然に対する優しさをこの句に味わっていた。そしてこれが雪国の豪雪に対するイメージだった。
 しかし、今冬初体験の函館地方の降雪量はこの一茶の「雪五尺」に感じていたのが単なるイメージに過ぎないことを思い知らされた。(つづく)