雪五尺

 雪五尺新参者は積もっている雪を見て「あー今日もか」と嘆きながらも、多少見栄を張るように元気なふりをして雪を掻いてしまうのである。隣近所の人と嘆きながらも雪掻きを終え多少の雪克服感を満足させるのである。雪は敵である。雪掻きをしないで「是がまあ」なんて朝寝をして雪の包容力に甘んじていようなんて思えないのである。
 初めての大雪に敵として戦っている。戦っても戦っても掻きだした道は日に日に細くなり、日に日に家より高くなっていく。結局雪には勝てないのに戦い続ける愚を繰り返している。
 やっとこのごろいざとなったら諦めることも大切だと考え始めた。死なない程度に雪をなだめすかしながら春を待つことが「雪国」新参者にもわかってきたような気がする。第一この先戦う体力は無くなる一方だ。見栄も張っていられない。闘うことをあきらめたその先の雪五尺に包容力を感じる日が来るかも知れない。
 「庭の木のみな溺れをり…」の後の「雪五尺」に替わる下五はまだみつからない。(おわり)