春昼

 タンボチェからパンボチェを日帰りする。パンボチェでシェルパが用意してくれた昼食を食べた。敷物の上に並べられたごちそうは何を食べたか覚えていない。それほど周りの山々に見とれていた。美しいとか迫力があるとかではなく、別世界でありながらどこかなつかしい大景色に自分がどんどん小さくなっていくような気がしていた。一瞬浄土ってこんな所かもしれないなどと突拍子もないことが思い浮かんだ。ガイドが山名を教えてくれたが、私はエヴェレストの有りようだけ心に刻もうと思いながら聞いていた。

     エヴェレスト街道

  春昼や神々の座に虫のごと  未曉