夕長し

自選して細る句集や夕長し   未曉

 先日全然見知らぬ人から個人句集が送られてきた。どうやら私が投句している俳誌の同人らしく、その伝で送られてきたらしい。定価がついている立派な装丁の個人句集である。代金、謝礼、礼状など一切不要と添え書きされていたので、感謝の気持ちから一読させて貰っただけにしている。

 俳句を作っていた父が亡くなったとき私が父の遺句を編集して句集を上梓した。印刷製本は五十部、百部と単位があってどうしても余ることになる。喜んでくれる人ももちろんいるが、大半は父の知人や俳句を読んでくれそうな人に押しつけがましく送りつけてしまった。そんな事情がわかるだけに「代金、謝礼、礼状一切不要」の添え書きは十分理解できる。

 だから私も高いお金を掛けてまで句集など作る気はないが、自分の俳句を振り返る意味から今まで四冊の句集を作っている。B6版、プリンター印刷、自家製本、三十ページ、二十部内外限定出版である。そして今回、自粛記念というか暇つぶしに五冊目を作ろうかと考え取りかかった。しかし、句がそろわない。自分の句を見る目にかなう自分の句が見当たらない。誰のために作る句集でもないし人の目を気にする必要もないのに自句の欠点だけが目についてしまう。句集を作ることの意味は案外こんな所にあるのかもしれない。

 いずれにしろ新コロナ肺炎感染症による自粛解除が早いか、私の第五句集出版が早いか。そんな程度の句集である。