時雨・スーパー(1)

  バーゲンのチラシ腐しの時雨かな   未曉

 惚けたら惚けたでしょうが無いと思っているが、できれば人に迷惑を掛けたくないからやはり惚けたくはない。昨日の飲み会でも「惚けない持論」に花が咲いた。年を取ってからの深酒は惚けを進行させてしまうのではないかと思いながらも「それはひとまず…」私も持論を…。
 私が退職しても妻は現職だったから、昼飯は自分で食べることになる。自分だけが食べれば良いから自己流で食べていた。用意する時間も後片付けの時間もたっぷりあった。当初は残ったご飯でチャーハンとか、インスタントのラーメンとか冷蔵庫掃除を兼ねて五目そば、鍋焼きうどんとかのローテーションだったが、しだいにソース焼きそばがあんかけ焼きそばに変わったり、たまにケチャップスパゲティが海鮮パスタに進化したりするようになった。その頃は「やーや昼間チョンガだから自分で昼飯作らねばなんねーのよ」等という口調で半ば自慢していたが、次第にグルメ番組からレシピを写し取ったり、食堂でコックの手元を観察したり頭を使っていることに気づくと、料理を作ると言うことが「惚け防止になっているのでは…」と思うようになった。今脳科学者が言い出す十年前である。妻が退職する二、三年前からは夕食も作るようになっていたが、妻が退職し、「夕食は私が作るから」と言ったときは「妻の惚け防止にもそれが良い」と思えたほどだ。そして今私は昼飯担当になっている。その昼飯がさらに進化しているかどうかは食べている家人の評価に拠るが、私の「惚け防止持論」は進化している。

(つづく)