走り蕎麦

 あちこち蕎麦の食べ歩きをしていた頃は幌加内弟子屈、札幌のオータムなんとやらへ二、三杯の蕎麦のために車を走らせていた。その蕎麦食べ歩きに飽きたわけではないが、蕎麦を食べ歩く時間も距離も短くなっている。美味しく蕎麦を食べさせてくれる蕎麦屋さんがあちこちに増えてきて「行きたてならない」し、この頃は出かけたついでに心して探して食べるくらいが年齢的にも体力的にも身の丈に合っているような気がしてきている。

 それでも「そば祭」の情報に触れると「行きたい…」と思ったりするが、新得幌加内までの距離感に負けてしまう。函館は「そば祭」からは遠いのだ。

 函館はそば祭からは「南の果て」と諦めていたが、その南端である福島町で4年前から「そば祭」を開催するようになった。ぜひ育って欲しいとの思いからその4年間毎年通っている。今年は9月23日に開かれ蕎麦をいただいてきた。最初の年は運営もぎこちなく、蕎麦打ちを見せる方に重きが置かれたり、折角の蕎麦が美味しくなくなってから食べさせる手際の悪さもあった。しかし、4年目の今年は昔から開催されていた収穫祭と合同開催だそうで明るい雰囲気だった。家族連れで来て、親は新蕎麦を啜り、子ども達はアイスクリームを舐めている…。会場の一角、そば祭のブースはには短い行列ができていて「たかが蕎麦、されど蕎麦」感をかもしだしている。

 私は新蕎麦が食べられればいい。盛りそば二枚をいただいた。香りが立つ。茹で加減もいい。つゆは甘いがそれはしかたがない。新蕎麦の香りをプラスチックの容器で味わうという「そば祭」の雰囲気は結構好きだ。相席になった地元の人との会話も楽しい。二横綱を出した福島町にちなんだ温かい「ちゃんこ蕎麦」も妻と分けて半杯をいただいた。食べ終わった妻はあれが美味しそう、これが安いと野菜ブースへ向かう。

 妻は二年目から一緒に来るようになり、知内温泉で蕎麦っ腹を温めて帰るのが恒例になっている。途中の山の紅葉に早いのが残念だが…。

  村興しテントはみ出て走り蕎麦  未曉