一巡して勝軍山から出ると午後一時。三時間も山野草の花を見、仏像に見られて歩いたことになる。出たところに松前の街が見下ろせるステージのような小さな広場がある。そこのベンチを借りて昼食にする。今日は眼下はまだ桜がまばらだで遠景も霞がかかり絶景とはいえないがゆったりと食事できるいつものポイントである。と思っていると三メートルほど後ろの桜の若木の支柱にカラスが飛んできて止った。手を伸ばせば届きそうな後ろから私の食事を狙っている。途端に落ち着かなくなる。早々にきりあげて、山歩きのスタイルのまま花見に公園の中へ降りてゆく。
 松前出身の書家を記念して連なる書家の書による碑林がある。道南の教員もいるので何人か私が見知っている人の碑もある。周りはまだ蕾の段階の木が多い。木札に書かれた桜の名前や立て札の経歴、謂われから咲いた姿を想像しながらリュックを背負いスパッツ山靴という無粋な花衣の花見である。
   人には人の花には花の物語    未曉