にぎりめし

 山へいく時の弁当は握り飯に決まっている。昨日の長万部岳山行も6時出発にあわせて、5時起きで握り飯づくりをした。
 前の晩に鮭の切り身を冷凍庫から出しておき、米を(この頃は二合)研いで、炊飯器のタイマーを4時半にセットしておく。冷蔵庫を点検し、具材、たまご、きゅりの漬け物、おかずになりそうなものをチェックしておく。
 朝起きるとすぐ、魚焼きに鮭をセットし、それが焼けるまでの間に卵2個分の卵焼きを焼き上げる。焼き上がった鮭をほぐし、海苔を用意する。
 我が家の握り飯はこの海苔が作り上げて来たと言っても過言ではない。この海苔は漁師の母さん方が寒中磯の岩から採った岩海苔を手作りで作ったもので、義母が手に入れてくれる。浅草海苔の紙のように薄く上品な海苔ではない。厚く、ぼったりしている。食べる時十分に醤油を吸っていて、海苔の香りだけでなく味、歯ごたえまで楽しむことができる。御飯だけでなく海苔を食べていることが実感できる海苔なのである。
 子どもが幼児の時使っていたプーさんが描かれた小さな茶碗に半分量ごはんを入れ、まん中にほぐした焼き鮭と(このごろううまいことがわかって)昆布の佃煮をいっしょに押し込み、その上からごはんでふたをして手にとってにぎる。2合の米で4こ(けっこうでかい)作る。海苔をガスの火でさっとあぶり香りを出していつものサイズに切り、片面を醤油につけたもの2枚で握り飯を包むように握る。
 4個の内訳は、1個は私の朝食用、2個は昼の弁当用、もう1個は奥さんの朝ごはん用となる。
 我が家で弁当が必要な時、子どもの運動会の時も遠足の時も私の担当は握り飯と卵焼きで、その間に奥さんが子どもが喜びそうな色鮮やかなおかずを作ることになっていた。多い時には、家族全員の朝飯用も作ったから、12〜3個作った時もある。
 今は、ほとんど私の山歩きの時の弁当作りにこのパターンが生かされる。しかし、おかずは色鮮やかでない。おかずはほとんど要らないし奥さんの手をわずらわせるような必要もない。残り物で十分だからであるでも、卵焼きだけは、作業手順として作ってしまう。
 山の愉しみはたくさんあるが、わたしにとってこの握り飯を山頂で味わうことも大きな愉しみの一つである。