柿を買ってきて食べた。子どもの頃の柿を思い出すためのように。

 柿と言えば祖母である。祖母と母の故郷である山形から祖母宛に毎秋必ず届いた。当時は木箱にパラフィン引きの茶色の紙に包まれ渋柿で送られてきた。木箱の釘を抜き、紙を裂き、びっしり並んだ柿の上から父の酒を振りかけ、また木箱の蓋を釘付けする。次の日にはもう待ちきれずこそっと木箱を開け中の一個を盗み食いする。見つかって叱られる前にあまりの柿の渋さに口の中を強ばらせて後悔する。母には笑われるが祖母は優しく見てくれていた。山形にいた頃の柿を盗みに来る子どもを見ているような気持ちだったのかもしれない。渋が抜けるまで一週間はかかる。その一週間が待てず、渋い思いを何度か繰り返し、ようやく食えた時は口が溶けるような甘さだったことを思い出す。

 山形から祖母にはいろんなものが送られてきた。米、餅米、そば粉、栗、豆…。それらのものは当たり前のように食べさせてもらっていたばちあたりだが、柿のときだけは祖母と母はいい所で生まれ育ったんだなぁと思っていた。

f:id:takasare:20071120224231j:plain

祖母宛の木箱の柿や色の葉も  未曉