店頭に艶やかな柿が山のように盛られていた。
子どもの頃祖母の元に私が逢ったことも無い従兄弟から毎年立派な庄内柿が送られてきた。
 この柿は渋を抜くために父が焼酎を霧吹き再び木箱を締めて十日ほど熟成させなければな
らなかった。子どもの私にはこの十日がとても長かった。待ちきれずにこそっと木箱を開け
て、何度渋い柿を食べたことか。あの柿に比べるとスーパーの柿が小さく味気なく思えてし
まう。結局このスーパーの柿を買うことになるのだが、一回この懐かしさを味わってあきら
めてからが常である。
      渋柿や火酒霧吹き酔い十日   未曉