春の月

     堀田 孝を送る
 通夜の葬儀場を出たら、釧路の夜空に眉月があった。全道的に吹き荒れた風が十勝耕地の土を交えているのか霞んでいる。
    眉の月君逝く春の隙間かな   未曉
 狭い道を無理して通っていくような逝き方に思えた。
 釧路への旅は、道南、道央、道東と春うららかな桜と新緑の萌葱の道だった。後ろに喪服を積んでいることがちぐはぐな道程だった。
    新緑の山路を後ろ姿かな    未曉
 当の本人が亡くなったことに未だ気づいていないのかもしれない。
    この後は背を見る歩み春紅葉  未曉