13/9/29・大三坂

 今日はこの大三坂のナナカマドの紅葉を見に来た。ななかまどは葉が赤くなりきれずにまだ緑の名残を宿し、実の独特の朱色が目だつ今頃が良い。電車通りから登り始める。
 登りだとどうしても足元を見てしまうし身体に堪えるので停まっては見、停まっては見ることになる。それも坂の上の方ばかりを見てしまう。一本横通りに出たところで下を振り返る。しかしナカマドの木も少ないし、正面の建物が邪魔をしてナナカマド越しの港の俯瞰もままならない。もう一本上の横通りまで登る。ほぼ期待通りの景色になる。カメラを構えると登ってきた若い女性が私の撮影の邪魔になっては悪いと思ったか、すっと横通りに逃げる。誰も人影のない液晶画面が淋しく感じられたが、シャッターを鳴らす。振り返ると上の方でカメラを構えている人がいる。今度は私が遠慮する。若い女性なら居ても良いだろうが、男が、それもカメラを構えている男ではこの景色が台無しだろう。
 道端の小さな店の窓を親子連れが訪う。「何がいいの?」「チョコがまじったの」と写真を指さす。店主が「はい分かりました。小さい方ね」と優しげに言うと女の子は「大きい方」と言い返す。母親が微笑みながら軽く店主を睨む。
 私はナナカマド越しの函館を楽しむため、大三坂の真ん中を横通り一本分降りることにした。若い女性は登っていった。親子は店の前の粗末なベンチに腰掛けた。
    坂道は下りを選ぶななかまど  未曉