13/9/29・函館ハーフマラソン

 チャチャ登りを上り詰めて後は風に吹かれるように降りてくる。改めて亀井勝一郎の文学碑に寄る。申し訳に咲かせているようなコスモスはあるが見捨てられた感は否めない。彫られた碑文が秋の陽に薄い。
 佐々木豆腐店は休みなので油揚げは買えない。その代わりのように浅利肉屋に入ってしまう。(コロッケはこの前買ったものが冷凍されているから…買わない…)と思いながら、目に付いた「串カツ5本と唐揚げ3百グラム下さい」と言ってしまう。典型的な衝動買いである。挙げ句「コロッケも二つもらうかな?」などと言ってしまっている。しかし浅利などで買い物をすると知らない昔の十字街がなぜか味わえるような気がするのである。
 浅利肉屋の前の十字路が封鎖されていて歩道では折りたたみ椅子などを持ち出した人たちが道路に向かって場所をとっている。函館ハーフマラソンのコースになっていることに気が付いた。ランナーはまだだが広報車が現在松風町付近を通過中だと伝えている。封鎖のコーンに沿って十字路を斜めに渡る。人の中を歩くのは厭なので一本高砂通りよりのグリーンベルトの道を市役所の方へ歩く。コースになっている昔の電車通りに声援や拍手が聞こえだした。折角だから様子を見ようとさっきそれた道へ戻る。
 走ると言うことにこれほどの表情の違いがあるのかと驚く。走り方だけではない。顔に伺える走ることの目的のようなものが一人一人違うのだろう。当たり前といわれれば当たり前だが走るという単純な誰でも出来る運動であることを考えればその百人百様はマラソンという競走からだろうか。私は走る体力も、気力もないことを高校時代の校内マラソンで思い知らされている。それ以来走ることからは避けている。だから走る人、走ると言うエネルギーを持続させるマラソンランナーには引け目を感じ尊敬している。
 一人一人の表情が見分けられるほどのまばらな走者の後ろから、大きな固まりが流れてきた。その中でも一人でも前の人を追い抜こうとしている人もいれば、沿道の応援の人を探しながら走っている人もいる。良い天気で何よりだ。
 グリーンベルトの木陰を市役所で突き当たり、消防本書の脇から駅へ向かう。マラソンを見たせいか急ぎ足になっている。この分だと予定より一つ早いJRに乗れるかも知れない。
    マラソンの一本裏の秋日和    未曉