年賀状(3)

 年賀状の内容も印刷手法に因る可能性や制約で変化してきた。
 年賀の言葉が中心のものから干支にちなんだ民芸品のイラストシリーズ、新しい年明けにふさわしい名句とイラストの組み合わせシリーズ、一年間の山登りの中で印象に残った山風景シリーズなど、印刷技術や描くことにこだわっていたからである。
 しかし今は俳句が中心になっている。いわゆる「フォト575」形式である。今までは何を描こう、どう印刷しようと頭を悩ます11月だったが今は俳句が決まればだいたい決まる。写真や描いたイラスト、文字をスキャナーで取り込みレイアウトすればパソコンとプリンターがチチチチチチと印刷してくれる。印刷した物が部屋一杯に拡がり家具や身体をインクで汚していた時代が懐かしい。失敗して無駄にしていた年賀状も0に近くなった。
 絵や印刷技術へのこだわりはパソコンが大方解消してくれる。版画やシルクスクリーンの温かみとか手作り感と俳句のコラボレーションも捨てがたいが、俳句中心の今の自分を知らせるにはこのフォト575形式が最もふさわしい。枯れてきたエネルギーの面からも。また、「年賀状って何だろう」という思いも頭をもたげてきたし…。