稔りの秋

 帰ってきたらちょうど向いの男の子も学校から帰って来るところだった。彼はTさんの家の栗の木が気に掛かるらしく立ち止まって見上げている。まだ青いがイガが割れて実の見えているのがあったからそれを見ているらしい。私が車庫に車をいれているうちに自分の家に帰った。私が台所で手を洗っているとさっきの男の子が長い棒を持って栗の木へ向かっていった。採ることにしたらしい。
 大きな栗がたわわに実っていがが割れている。それを見かけて採りたいと思わない子の方がおかしいと思うから「よし!やれ」と思う。この子たちがまだ小さいときにTさんの了解のもとみんなで栗採りをしたことがあるし、私には、庭の中に入らなければTさんは何も言わないことは分かっている。かといって大人が手伝うことではない。「採れろ採れろ」と思いながら台所の小さな窓越しに応援していた。
     栗盗る子手伝わねども見守りぬ   未曉
 電話が来て結果は見届けることはできなかったが、向の子どもたちは健やかに育っている。