りんご

 俳句サークルの兼題の一つがりんご。りんご所七飯の人は果樹園のりんごを詠むが、私はどうしても食べるりんご、それも幼い頃デザートなどと言う言葉も知らなかった頃の食後のりんごに思いが行ってしまう。
 その頃の我が家はりんごは一つを食べるのではなく切り分けて食べるものだった。我が家では二つのりんごを6人で食べた。父と母と祖母と。そして三人兄弟で。
兄が切り分けた三等分は大きい小さいでけんかになった。母の三等分で静かになった。そこに「笛吹童子」や「紅孔雀」や「話の泉」が流れた。
 貧しいけれど懐かしい昭和に繋がるりんごである。
    三等分ラジオの夜のりんごかな   未曉