八甲田(2)井戸嶽〜大嶽


 赤倉岳から井戸岳への外輪山の尾根歩きはものすごい強風の中だった。左側は赤倉の壁と呼ばれる崖であり、右側は火口壁の急崖である。強風は火口の方から吹着付ける。幅1〜2Mはある尾根路なので普通ならば恐怖感はないだろうが、油断すると飛ばされてしまう程の強風の中ではその崖を転げ落ちる自分を想像しながら歩かなければならなかった。さいわい両側にロープが張られていて時折捕まることが出来た。いつでも掴むことが出来るように右側のロープの蕎麦を歩くつもりが、その2Mの道幅を飛ばされるように左のロープまで身体を持って行かれた。強風の中を歩く姿を撮ろうと思ったができなかった。常に踏ん張り続ける歩きでやっと井戸岳の山頂にたどり着いた。
 ピンぼけ覚悟の写真を2,3枚撮って井戸岳通過。

 路は井戸岳山頂から回り込むように大嶽との鞍部へと下っていく。天気は回復して青空も広がってきたし明るい。大嶽ヒュッテが鞍部の底にはっきり見える。遮る者はなにもないがその空間は風が一方向にだけ吹いている。前を行く登山者の様子が風を見せてくれる。皆前屈みになって風と闘いながら歩菊だっている。中には這うような姿も見える。下りなのにスピード感がない。スローモーションの映像のように見える。私達も強風の井戸嶽山頂からその強風の中に下り始めた。鞍部地形が強風の通り道になっているのかこの下りが最も強かった。知らない人に掴まってしまったり、知らない人に掴まえられたり、新しゃんは前を歩く女の人が蟹が這うように降りるのが心配で追い越せない。井戸岳前で尿意を感じていたが忘れてしまっていた。大嶽ヒュッテについて緊張が弛んだ途端読みがえってきた。丁度良いトイレだった。繋がった登山者と強風の中どうしようと思っていただけに強風のおかげかもしれない。

 ヒュッテのある鞍部の底は幾分風が弱く、ヒュッテ前のベンチで昼食を食べた。予定ではヒュッテから大嶽山頂をピストンしてヒュッテに戻り、紅葉の毛無岱経由で酸ヶ湯へ下る予定だったが、大嶽から直接酸ヶ湯へ降りることに変更された  大嶽から降りてきた人たちの話によると大嶽の山頂付近も相当の風らしい。フリースを着込んだ。