伊達紋別岳(2)

  仄暗い木下闇に咲くエゾカンゾウの鮮やかなオレンジが美しい。しかし、あの時のKaさんの話と違って道端のシラネアオイに花はなく、足元のすずらんもない。終わってしまったようだ。目立つ花がない分急勾配に息切れや、だるくなる腰に意識が行ってしまう。仕方ない。この苦しさを楽しもう。上から談笑の声が聞こえる。先行の隊員が休んでいた。三合目「一望台」。左側が谷に向かって窓のように開いている処で簡単なベンチが幾つか置かれていた。我々が行くと上司の命令一下全員が道を外れ笹の中に立った。ベンチにザックを置いた我々がその展望の窓を塞ぐことになる。申し訳ない。とは言っても今日の天気ではそこからは洞爺湖方面から伸びてくる国道に沿った伊達の街がぼんやりと海霧の中に見えるだけだったが…。休みポイントのベンチや要所の標識の設置、何よりもこの山道の整備の心遣いは嬉しい。地元の歩くスキー愛好者のグループに依るらしい。この一望台の看板の支柱には歩くスキーが使われていた。ここでも自衛隊に先を譲って、その後ろから出発した。  
 高度が上がってくると花も増えてきた。大きな葉っぱの下で今までピントがあったことのないホウチャクソウ、少し終わりかけていたがクリーム色のオオヤマオダマキは私は初見。イチヤクソウ、クルマバツクバネソウの撮影を挟んでの歩きになった。いつの間にか登りは緩やかになっていた。
 道が尾根を外れ樹林が切れた。道はトラヴァースしていくようだ。そこが一服広場と名付けられた七合目。チシマフウロ、ハクサンチドリの中にベンチと標識があった。そこから斜面が流れ落ちていっているが深さも大きさも霧に隠れて浮揚感の中の落ち着かない一服をする。ペットボトルの氷が良いように解けて水の冷たさが美味しい。