その2=終点の町谷地頭


 終点で降りると道が三方向へ誘う。その左へ…。巴マークの函館漁協、高野寺境内の露仏、寂しい住吉漁港を過ぎる。さすが旧い町白壁の土蔵がある。椿の蕾、蝦夷躑躅の蕾がふくらんでいる。電車道路を越え、澱の中で動きの少ない鳥たちをみながら函館公園に入っていく。子どものいない子どもの国の遊具は止まっている。喫茶店「想苑」へ数段の階段をリュックを背に老夫婦がやっとの思いで登っていく。この店のファンなのだろう。扉を開けたとき笑顔で迎えられるのが目に浮かぶ。また公園に入って裏口から出る。辛夷の花芽が柔らかく深緑してふくらんでいる。グランドから八幡宮を左折する。碧血碑への案内に添って曲がり登れば少し汗ばむ。碧血碑は寄らない。落ち葉の道はやがて舗装道路に。途中開けたところから町を見下ろす。電車の終点を中心に谷地頭は皿のようである。この散策路は皿の縁をなぞって歩くようになっている。
     春の雲終点の町坂の町    未曉
七曲がりコースの登山口を過ぎる。左手の斜面下はすぐ墓地である。立待岬は車が2,3台。新婚さんらしきカップルを優先させて岬の突端のベンチに座る。休みながら句を探すが満足な物が出来ない。
     東風吹かば立待岬海に出る   未曉
 あやふやだった「啄木一族」の意味をその墓の説明板で知り、坂を下る。終点の方へ降りずに山裾を捲くように、亡き父がお世話になった施設に向かう。当時は公的な施設だったが今は民間の経営になっていた。月10万円〜14万円で…と案内板に書かれていた。そして八幡宮の山道を終点へ下った。
 宝来町まで歩いて気になっていた「天満つ」で蕎麦前を楽しむことに。酒を頼んだが料理は天ぷらだけ。それも海老が中心だという。すぐにもり蕎麦を頼んでそれをつまみにした。海老天が中心の蕎麦屋さんらしい。
 結局函館駅まで歩いた。駅では休む間もなく13時20分のJRに乗ることが出来た。9時半桔梗駅出発だから手頃な散策と言える。