堀川町・喜の家(1)

 義母を送迎するマッサージ施療院の近くに「手打ち蕎麦」の幟が立っていた。3月26日にオープンしたそうだ。隔週で通る路なのにその準備や気配に全く気がつかなかった。マッサージ終了時が開店時刻。義母に付き合って貰ってそこで昼飯にした。
 入り口の右に通りの窓に面した4客のカウンター席。入ったところに4人掛けが2卓と二人掛けが3卓、そのL字の中に調理場がある。堀川町界隈の雰囲気に合った明るい店内の蕎麦屋さんである。
 メニューは冷たい蕎麦が4種と、温かい蕎麦が4種。そのうちの種物も天ぷらが絡んでいる物だけのシンプルさである。「蕎麦を食べてください」といういさぎよさが感じられる。わたしはとりあえずもりとかけがあればいい。メニューには蕎麦、もり汁、かけ汁などについての店主の基本的な考えがかかれていたが、蕎麦粉の産地とか種類、製法、などいわゆる「こだわり」めいたことは書かれていない。「二八です」とだけあった。「他で語らず蕎麦に語らせる」ということか。
 蕎麦は挽きぐるみに近いのか色は黒いが、香りがよく素朴さの残る舌触りなど蕎麦の風味が美味しい。角が立っているめんの細さや茹で加減のよさなどに店主の勉強の跡が窺える。美味しく仕上げられている蕎麦である。もり汁はもう少し辛くてもいいと思うがそれは私の好みの問題である。もう一つ、蕎麦を最後の切れ端の一本まで食べることをポリシーとしている私としては、器の笊は一考の余地がある。つかみづらいし水の切れも悪い気がした。