堀川町・喜の家(2)


 掛け蕎麦を追加した。出汁が効いたかけ汁でおいしくいただけたがもり蕎麦に感じた素朴さは薄かった。
 もり蕎麦の薬味はさらし葱しか付かなかったので勘定の時に「山葵はつかないの?」と尋ねたら「あります。でも、蕎麦を味わって頂きたいのでおつけしません…」と店の人が言っていた。やはり、忘れたのではなかったようだ。
 蕎麦の風味や素朴さを味わうためにそのまま食べる。もり汁の醤油味とのコラボレーションで食べる。山葵を付けることで蕎麦の甘みを感じて食べる。私はそう言う三通りで一杯の蕎麦を楽しむことにしているので山葵が無いのは寂しいし物足りなく感じてしまう。しかし、店主は「喜の家の蕎麦を味わって下さい」と自信をもって山葵無しの「されどそば」を出しているのである。もし、山葵でこの蕎麦を食べたかったらこの次は私が山葵を頼んで食べればいいだけの話だ。
 壁に「蕎麦を打つ人 食する人 共に喜び合う 一日一麺」と書かれた額があった。一日一麺は余計だがその前の三行は私の「たかされ道」に通ずるものがある。もり、かけ650円が共に喜び合える値段であればいい。