退職後一年間の再任用を区切りに教職を止めた四月、備忘録だけは続けようと考えた。日記は続かないことがわかっていたし、人や仕事の約束も発生しない無職の身だけれど、出来事だけでも記録し、また「特記事項無し」も積み重ねれば何か意味を持ちそうな気がしたからである。
 現職時代は業者から貰った備忘録を使っていたが、見開き一週間一日を時間を追って記録できるタイプのものにした。A6判のビジネス手帖形式である。その時はそれまでのものが3月31日で終わったので躊躇無く4月始まり3月終わりのものを購入した。
 現職時代は仕事をこなすことに追われ、書くことを忘れてしまうという余白の多い備忘録だったが、退職後は書く時間はあるが書くべきことが無くなった。余白が何か言いたげで「特記事項無し」は避け、無理矢理書いた。風呂に行ったことや買い物に行って何を買ったかまで書いた。
 この頃は中心がブログに移ってしまったので毎日の天候の他は書くことがなければ無理して書かない。それでもやはり書くことの積み重ねは貴重で、仏事、行事、人事、親戚とのこと、山歩きのことなど昨年一昨年の同じ頃を読み返すことで、思い出しながら処している。うっかりが以前にも増して多くなったこの頃無くてはならないものになっている。
 ただ、学校との関わりも全くなくなり四月に何の意味もない無職人間は、普通の人の一月始まりのサイクルに従うべきではないかと思っている。十二月、来年こそは一月始まりの備忘録を買うことにしよう。今使っている備忘録の1月から3月までの余白は勿体なさを乗り越えて…。

  はだれ雪年度に果つる日記かな