前千軒岳(2)


                千軒平・大千軒岳を背に前千軒岳へ
 千軒平まで後少しの所の分岐から右に折れ前千軒に向かう。水分補給をし深いキレットに備えて身支度を弛み無くする。前千軒への登山者は少ないらしく、草が被って道が見えない。最近まで雪渓が残っていたであろう窪地に、ニリンソウ、フギレオオバキスミレサンカヨウが花を咲かせていたし、桜も咲いていた。足一つ分の痩せ尾根の東側には大きな雪渓を貼り付け、西側は濃緑の夏草が生い茂ってそれぞれ深い谷へ落ち込んでいる。降った雨はわずかな差で日本海へ流れるか津軽海峡へ流れるか…。鋸状の高いところではタニウツギが赤い蕾をこれ見よがしに咲いていた。アップダウンに疲れ、難所に緊張しながら前千軒の頂上に着いた。座ると何も見えなくなるほど草丈が伸びていてあずましくない。頂上からはずれそれぞれ場所を決めて場所をとると今度は蠅や虫が開けた口にまで飛び込んでくる。虫除けスプレーでバリアを作りその中で昼を食べた。
 前に日本海に落ち込む山々、後ろに知内川の大峡谷を見ながらの握り飯はコンビニ握りとはいえうまい。
 往路を分岐まで戻って千軒平の十字架へ。他の人はここで花を撮るが、今日同行の奥さんは初登頂なので、二人で大千軒の頂上まで足を伸ばした帰路千軒清水を水筒に汲んで帰路に備え、た。チシマキンレイカミヤマキンバイミヤマキンポウゲ、アズマギクが広くなだらかな千軒平を彩っていた。主役のハクサンイチゲの花時は過ぎていたが花の山にふさわしい景観を見せてくれた。
 3時、山は誰もいなくなった。帰りを急ぎたいが膝をこわしたくない。暑さ、汗、蠅、ブヨ、疲れに足を機械的に運びながら帰途入る予定の松前温泉の事ばかり考えていた。
 家到着8時15分。W杯サッカー日本対オランダ戦に間に合った。