車で奥のほそ道・殺生石

 那須湯本温泉へ谷筋を詰めていった最奥部に殺生石がある。

 《殺生石は温泉の出る山陰にあり、石の毒気いまだほろびず、蜂・蝶のたぐひ真砂の色の見えぬほど重なり死す》と記しているが句は残していない。火山性の噴気ガスが作り出した「賽の川原」である。注連縄の張られた大石があったがそれが殺生石であるとは書かれていなかった。案内板に「殺生河原」という言葉があったがその方がふさわしい。昔、退職後の父が母を連れてこのあたりを旅したとき、殺生石と共に写した写真があったが、それとは違うものだった。
    殺生石言葉無きまま戻り寒     未曉

 那須湯本温泉はひなびているが、少し下の那須高原はリゾート的な観光開発がされている。那須湯本温泉を頂点として二等辺三角形を描くように走ったが、その沿道手打ち蕎麦の看板、幟がたくさん並んでいた。その中に廃業の店もあちこちに放置されていた。