車で奥のほそ道・深川
芭蕉の奥の細道は深川から出発している。深川に住んでいたから当たり前と言えば当たり前だが、今回その住んでいたあたりを歩いてみて気が付いた。芭蕉を陸奥へ誘ったのは芭蕉庵のすぐ前を絶え無く流れ来る隅田川だったのではないだろうか。
川口で川の水は海の水になる。それを毎日見ているものは自ずとその水の源を思うのが常であろう。芭蕉は「奥の細道」の冒頭、人間は旅人であるとし、「白河の関越えんとそぞろ神のものにつきて心をくるはせ…」と自分の旅への発心を書き記している。隅田川は利根川に繋がる。その北に阿武隈川が流れ、その奥に北上川が流れる陸奥がある。絶え間なく深川まで流れ来る水の旅を思うことが芭蕉を陸奥に向かわせたのではないだろうか。
芭蕉庵の跡も採茶庵の跡も訪れたが当時を思わせるものであろうはずもない。単なる点でしかない。その点に立ったことと隅田川の流れが、此処に舟を浮かべて旅立った芭蕉を偲ばせた。
芭蕉像背に花負ふ隅田川 未曉