この時期になると恒例甘エビが手に入る。皮むきにはけっこう時間もかかるが美味しいので食べるときのことを考えると苦にならない。昼ころにあがったのが夕方に届くから生きているものもある。大きいものほどその可能性が高い。こんなことを書くのは、手の中で死んでいると思っているものにぴくんと動かれるのが怖いからである。みんながそうだと覚悟して取りかかれるが、予期しないときに命を主張されると怯えて落としてしまう。今日も何匹かの逆襲にあった。臆病なのだ。
 だから何の魚でも躍り食いも苦手だ。第一エビを生きている内に食うとか今まで生きていたものが美味いとか言う気が知れない。エビの美味しさは次の日あたりまで寝かせて置いて食べると本来の味が出てくるのである。我が家でも明日の夕食にエビ丼にする。ご飯の上に刻み海苔を敷き、その上に今日剥いたエビを全面にのせ、山葵醤油をかけて食う。その時はもう完全に命の逆襲は無い。美味しさだけが口に広がるのである。
 とは言うものの剥きながらも20匹くらいは食べ、活きの良さも楽しんでいる。なんだかんだ言いながら、思いながら剥くと速く終わる。後は明日のお楽しみだ。
    笊の甘海老あちこちに命潜め   未曉