小鉾岳に登ってきた。八雲、野田生川沿いの舗装道路をを20キロメートルほど上った酪農地域に登山口がある。登山口が尾根の末端になっていて、すぐ急登となる。下の方は未だ紅葉も浅いが、高度が上がるに連れてブナの黄葉、楓の橙から赤へのグラデーション、足元の草紅葉が目を楽しませてくれる。
 秋特有の展開の速い空模様が、葉を半分ほど落とした枝を透かして見える。一雨を覚悟して歩いていたが雨は降らず、時折枝や岩崖に鳴る風が落ち葉を巻き上げて吹く。頂上直前に距離50Mほどの痩せた吊り尾根がある。歩く幅しかない。左側は落差100M以上はある崖である。右には道に沿って低い木があるが同様の急崖が谷へ落ちている。私が歩ける山では数少ない「踏み外せば死」に直結する場所といえる。しかし、こんな所の景色がまた素晴らしい。左側は草木の少ない崩落の急斜面が灰白色大三角状に落ち込んでいる。そしてそれを取り囲む頂上岩峰を支える岩壁や、向かい側の山の斜面の紅葉が秋のるつぼのように谷底に渦巻いている。ふらふらと誘い込まれそうになる。
  吊り尾根に渦巻き誘ふ谷紅葉  未曉
  岩崖に紅葉の色の風見えて   未曉