季題「網戸」 今年の夏に寝苦しい夜は少ない。それでもやはり夏、暑さで目を覚ましたり、寝付かれない夜はある。そんなとき網戸にする。ひととき冷気が入ってくる。網戸がいろんなものの境界になる。内と外、暑さと涼しさ、疲れと新鮮さ、今日と明日、……。そのうち眠れるのが今年の夏だ。
  物憂さを吐き闇を吸ふ網戸の夜   未曉
 季題「新涼」 我が家のウッドデッキは私の部屋の東側に出してある。そのため午後になると日陰になり涼しくなる。夕方そこでの晩酌は至福の一刻である。私がやることにしているわずかな家事も、アップル温泉での風呂も照準をその時刻にあわせて午後を過ごす。氷を浮かべた焼酎の水割りの時もあれば、冷やした日本酒の時もある。盆に二皿くらいの肴と酒を用意し、ウッドデッキに胡座をかく。
 妻が帰ってくる夕食までの間はまさに新涼の一刻である。
  新涼や青磁の酒盃盆に浮く     未曉