がびの(2)

 かけそば
 「がびの」にはメニューとしてもりそばとかけそばしかありません。これは私にとって最高に嬉しいことです。 天ぷら蕎麦はあるのにかけそばがない店は結構あります。「蕎麦はもりで食べてこそ蕎麦だ。」というのはわかりますが、私はかけそばが好きなのです。誰にどういわれようと、あのだしのきいたかけ汁の湯気の中のそばの香りと素朴な味わい…。きりっとした挽きたて打ちたて茹でたてのもりそばを蕎麦文化の進化形とするなら、凶荒作物として農家の囲炉裏端の夕餉を温めた暖かいかけ蕎麦には原風景の懐かしさがあります。私に蕎麦の味を教えてくれた祖母は山形の田舎出身です。
 もりそばを食べ終わってから見たメニューにかけそばを発見してさっそく頼みました。出された蕎麦を見て麺の細さがちょっと気になりました。麺が汁の熱さに負けてしまいそうな気がして急いで食べました。熱さで増幅された香りの湯気が食欲をそそります。一気に食べてしまいました。かけ汁もしょっぱめで私好みです。そば湯を返してしまったので少ししかいただけなかったのが残念でした。
 蕎麦教室的な要素も持たせているからでしょうか、開店して間もないからでしょうか店の雰囲気みたいなものは未だ出ていない感じでした。これから作られていくのでしょう。
 もりそばとかけそばだけで商売はたいへんだと思います。と言うより無理だと思います。そんな苦労を乗り越えるものが、「がびの」にあるのだと思います。
 正方形の朱塗りのせいろがもっともっとしっくり似合う店になっていくような気がします