客あしらい(3)

 次女のアルバイトに当たって面接があり、その時に「とても丁寧な言葉遣いですね」と言われたそうで、それが採用の決め手になったと言うようなことを同居している長女から聞いた。親ばかかもしれないがうれしいことである。できれば従業員の形式としての丁寧さでなく自分の言葉としてお客さんに話しかけて欲しい。
 「客あしらい」。長女を連れて行っていなかったので、帰郷のの歓迎会に「田ざわ」の天ぷらを食べに行った。ご主人は流れるように天ぷらを揚げながらその合間にネタの産地やら旬の話、客の話題に併せた話をはさみながら天ぷらを愉しませてくれる。奥さんは、客の飲み物やお膳周りの世話をしながら、その話に合わせたり広げたり阿吽の呼吸で時が流れる。娘は、大きさ、姿、形まで吟味された揚げられる前のエビを見せてもらっていた。奥さんがご主人の趣味について褒めると、ご主人は「こういう風におだてられて働かされるのさ」と受け流す。客としては「実は我が家も…」と納得して杯を手にする…。客あしらいは人である。
 「そろそろ天ばら丼が出て、手打ち蕎麦が出て終わりか…。」
 窓の外は遺愛高校の庭満開の桜の夜である。