花見

 5月号の「鳥雲」表紙のために桜を撮そうと五稜郭公園を歩いた。花より先に大音響でカラオケが五巻を圧して耳から飛び込んできた。自分たちが聞こえる範囲で良いものを、公園の反対側までボリュームを上げるのは無粋である。本人たちが得意になって歌っている分その品性まで疑いたくなる。堀端に従って歩いていくと、そのカラオケグループの蕎麦を通らざるを得ない。ひろーく場所を取っている。一人がマイクを持って得意げに歌っているが耳を傾けて聞いている人はいない。広さの割には人はまばらで、それぞれが勝手にお喋りしながら食べたり呑んだりしている。歌っている人のためだけ、無理矢理人に聴かせるためだけの大音量なのである。花を楽しむ風情も粋も無い。昔、酒に酔っぱらって濠に落ちる人も」いたが、ある意味そういう人の方が「花見」に似合う。
 花を楽しむ楽しみ方は人それぞれだから、いろいろな楽しみ方を見て歩くのもおもしろい。
 小学生らしい女の子の一団が傍に自転車を置き、キャラクター入りの敷物を敷いてお菓子を食べながら花見をしていた。少し年寄りじみた感じがしたが、女の子らしいと言えば女の子らしい。土塁の上では二十歳前後の男の子が麻雀卓を囲んでいた。何もここまでとも思うがニコッとしてしまう。粋かどうかは別としてだれにも迷惑をかけていないし、見ていてほほえましい。
 必要を通り越した場所取り、他の人の耳を奪う大音量のカラオケは無粋を笑うより腹立たしい。