籤運(1)

 冬を控え給湯ボイラーが不調になり買い換えることにした。そういうものを取り扱っている所に勤めている友人に相談したところ、展示会があり現物が見られるというので出かけた。おおよそ決めてあったし、値段も聞いていたので、展示会の会場ではいくつか確認してそこで買うことに決めた。帰り際、彼が「抽選して行って」と言うので出口の所の抽籤コーナーに寄った。係りの女性に契約書を見せると「7本引いてください」と言って三角籤の入った箱が差し出された。7本引いて渡した。三角籤の周りを千切り破った彼女は一枚目を開き中央に印字された数字を見て「一等です」と言う。この展示会のチラシも満足に見ないまま来たので「一等って何がもらえるの?」と訊くと、「これです」と言って傍らのコシヒカリ10キロの袋を叩いた。ティッシュぐらいにしか思っていなかったので「やったー」と思った。籤を開くのに手間取っている間に壁を見た。高額の買い上げ客向けの抽籤コーナーらしく特賞から4等までの空籤無しである。特賞は一万円である。欲が出る。彼女の手元に目が行く。単純だからすぐ欲が出る。3本続けて「4等」と言われる。「俺の籤運もこの程度だ」と単純なので欲が萎んでしまうのも早い。五本目は「3等、いかめしです」と言われた。なんで「いかめし」なんだと思いながらも「3等」と言う響きが嬉しい。次はまた「4等」しかし最後、彼女は低い声で「特賞です」と言った。隣ではガラガラポンの抽籤器でティッシュが当たっても鐘が鳴らされ大きな声で「大当たりー」と賑やかなのに彼女の低い声はありがたかった。私も声にならない声で「おーっ」と叫び、小さいい声で「ありがとう」と言っていた。内心は興奮していた。
 私の今でで最高の籤運は半世紀も前のバットである。