ブナの花観察会

 静観園のヤマザクラが咲き疲れたように赤ピンクである。その駐車場が今日の集合場所である。いつもと違う。今日は、Yamaさんの所属するボランティアグループ主宰の観察会に誘われて庄司山に登る。30分歩いて第2砂防ダム駐車場で参加者全員が円形になり観察会の趣旨が話された。野生生物の保全管理の適正化を計るためにブナやミズナラの実の豊凶と野生動物の関係を調査する。そのための観察木を庄司山で見つけようということらしい。フムフム、でもブナの花もミズナラの実の同定も出来ない私には理屈はわかるけれど実感は伴わない。
次に実際に調査研究に携わっている人たちが紹介された。道内の林業試験場に勤務している人たちらしい。江差美唄から休日返上で来られている。ヒグマを、鹿を、樹木を研究している旨の自己紹介があった。ここに来るまではいつもの山歩きを誰かの説明を聞きながらするくらいにしか考えていなかったが、どうやらチャンネルを切り替える必要がありそうだ。だからと言って私のチャンネルに教育チャンネルは無い。やばい…と思ったが今さらおそい。聞き役やうなづくき役で参加の義務を果たすしかない。
 参加者には子どももいれば長靴のお年よりもいる。あっちの木を観察、こっちの花を撮影、この際とばかりに専門家に質問する人がいてそこに輪ができ時々笑い声が起きる。時間がかかったが、その分尾根への取り付きの急登も疲れることなく登ってしまった。あわよくば独活でも採ろうかと思ったが、自然を大切にするボランティアの場ではどうも気が引けてしまう。後は、数年後には道が隠れてしまうこと必至の笹を分けてのハイキングだった。
 頂上では、江差でヒグマの生態や行動を調査研究している方からレクチュアがあった。○熊は食べ物が豊富なうちは冬眠しない。食べ物が無くなると眠る…。畑を荒らしたり、人家のゴミをあさったりするのは冬眠できないからではなくて、そこに食べるものがあるからなのである。熊が勝手に行動しているのではなく、熊が人間の仕業に合わせているだけなのである。○熊は縄張りを持たない…。以前に見たテレビ番組で一つの山の一面を縄張りにするという記録を見てから持っていた、一斜面に一頭という誤った認識を訂正させられた。○オスの行動範囲は相当広い…。戸井辺りから森町辺りまでの広さで歩いているのだ。○鈴は熊に自分を知らせるには有効だが、鳴らしっぱなしでは熊の存在を人間が聞き逃してしまいかねない…。ホイッスル、ホイッスル。
 熊はいつも私たちの近くにいるのである。夢中になって山菜を採っている人間と、食えるときに食っておこうとこれまた夢中な熊といきなり出会うことは何の不思議でもない。「私はここにいる。あなたに対して何の敵意も無い。」とホイッスルを吹き鳴らす。この音の届く距離が、人間と熊の距離なのだろう。この方が言っていた「人間と熊の適正な関係」を私は「熊と人間の距離」として捉えた。この距離を保たなければならないのは明らかに人間の責任だ。話を聞きながら、格好だけのうなづきではない、なるほどと言う実感付きの深いうなづきになっていた。
 静観園の駐車場に戻り、観察木の設定もできたらしい報告があった。
 北尾根から頂上へ登る前、丈の高い笹原でKuさんと二人で聞いたあの唸り声はたしかに熊だったと思う。25人の歩きはさすがにうるさかったのかもしれない。いろんな人間がいるようにいろんな熊がいる。寝ぼけていたのかもしれない。熊を少し身近に感じた。でも、○熊はペットではない…