アイヌネギ(2)

 いつものアイヌネギ畑に入っていくと案の定葉を広げたアイヌネギの鮮やかな緑色が目に飛び込んでくる。数が多いので一面アイヌネギの葉っぱばかりに見える。理想形は、7〜8cmの葉が筒状のまま茎から直立し、その茎が丸く太いものなのだがこの様子じゃ望むべくも無い。茎がたくましく丈の短めのものを採って、刃先を切り落とすしかないと決めた。決めたらあとは、採るだけである。急斜面だが動き回らなくても採れるので苦労は無い。過去二年間、夢中になりすぎて写真を撮っていなかったので、忘れないうちに他の二人の様子を写真に収めた。ちょっと体のバランスを崩しそうになって掴んだ木がタラの木だった。ついでにてんぷら用にその芽をいただいた。
 横浜に送る分、我が家で味わう分に醤油漬けにする分があればいい。小一時間で採れてしまった。ナップサックから顔を覗かせている収穫物を見ながら昼飯を食った後、菫とカタクリの山道を降りた。
 帰り、潅木がかぶったみちではなく北斜面からの登山口を確認して「来年はこの登山口を使おう」ということになった。来年は、もう少し登山気分も味わえるかもしれない。
 我が家の軒下の砂利に座って収穫物のゴミを取り、新聞にくるみ発泡スチロールの箱に詰めた。以前、ジンギスカンのタレはベルのたれでなければ…(横浜辺りでは売っていないらしい)と言っていたので予め買っておいたそれも2本入れた。最後に葉が開いてしまった言い訳を一筆書いて宅急便に頼んでやった。
 夕食は当然、タラの芽と葉先を切り落とされたアイヌネギの天ぷらになった。十分「美味い」。時期を外してしまった今年、あの留守番電話が無かったらこの美味しさはあきらめていたかもしれない。グラスを持つ親指と人差し指の紫色を見ながら「美味い」のである。