三枚岳・山容(2)

 海向山は10年間その麓から毎日眺めていた山である。恵山と海向山が作る谷を流れる八幡川の海向山側に住んでいたから、海向山の山麓に住んでいたことになる。恵山が活火山特有の白茶けた荒々しいのに比べ、海向山は緑に覆われた優しい山である。恵山霊場であり登山者、観光客も多いのに比べて隣の海向山はたまに物好きな登山者が行くだけの添え物のような山でしかない。小学校の校歌にも恵山は出てくるが隣の海向山は出てこない。それが、この三枚岳からは恵山に立ちはだかる雄雄しい姿を見せている。恵山を守るかのように立っている。海向山がすごく立派に見えるのである。
 いつも見る位置による山容の違いには驚かされる。当たり前である。物事も角度を変えて見なければ本当に理解したことにならないことは百も承知だ。でも、寒い強風が吹く三枚岳の頂上から海向山を見ていると、どうも角度の違いだけではないようなものもあるような気がする。10年間その麓で暮らしたこと、実際に二度登っていること、そして今日汗をかき雪に足を取られながらの急登の末だからこそ立派な山容に見えたような気もするのであるる。
 雁皮川上部からの烏帽子、袴腰。貧乏山からの駒ケ岳。747ピークからの雁皮…ここ数回、馴染みの山だと思っていた山の山容の違いに感動させられている。