模様替え(後)

 沈んできたのである。壁の関係やウッドデッキへの出入り、仏壇の前も空けなければならないなどを考えるとどうしてもパソコン関係をその接合部分に置かなければならず、それに伴って机やパソコンデスクがそこに集まってしまった。プラス私の体重である。敷居から二枚目と三枚目のフローリングが離れてきてその隙間が大きくなってきた。収納戸棚の扉が合わなくなってきたし、繋ぎ目の外壁も影響を受けてきている。
 本体は20年を越した今でもびくともしていないししっかりしている。退職時に外壁と屋根の塗り替えをして、あとは家にかけをかけないことに決めたので私の部屋もだましだまし使うしかない。そのだましの一手としての模様替えなのである。
 思い切ってパソコンを今までと反対側に移動することにした。そしてパソコンデスクとして使っていた子どもの学習机を解体し、退職後形ばかりになっていた私の仕事机にパソコンは置いた。ここでインターネットが問題になった。外から入ってきているケーブルが短くて届かないのである。ケーブルテレビ会社に問い合わせると「すぐできます。1万500円です」と今にも出かけてきそうな感じの返事である。「考えます」と言って考えた。モデムを良く見ると当然モデムとCPをつなぐケーブルがある。これを伸ばすのも一方法と思い電機店にいった。なんと7MのLANケーブルが800円である。長く伸ばしても影響は無いという。これで解決した。解体した机の引き出し部分だけ利用してプリンターとスキャナの台にした。机一つ分の余裕が生まれ、何より繋ぎ部分の重さは解消できた。今までと反対側が重くなったら繋ぎ部分が持ち上がりはしないかとまるで根拠の無い非科学的な希望さえ抱く始末である。以前よりもっと快適になった。
 昔はやらなければならないことへのプロローグとして模様替えをした。今は模様替えをしても何も控えているわけではない。
 しかし…  人生の後半、避けられないものがある。それを迎えるには模様替えでは済まされない。かといって今準備を始める気にはなれない。始められるかどうかもわからない。
 国語の教科書に載っていた「田中正造」。「死んだときは頭陀袋一つだけだった」と書かれていたと思う。比べるべくも無いが、私の父もあっけないほど残していなかった。理想ではある。