模様替え(前)

 中学時代から高校大学…いや、進学や就職の受験のときの試験勉強は、まず部屋、もしくは机上の整理整頓から始まった。きっと、普段何もしないでいるからいきなり机に向かうのはギャップが大きいというかハードルが高いのだろう。さも「勉強に立ち向かえないのは部屋が汚く、机の上が乱雑だからなのだ」という言い訳を家族に向かってするかのように不機嫌そうに本棚の本を番号順に並べたり、見せないでしまった学校からのプリントを破り捨てたりし始める。時には楽しくなり小規模な模様替えに発展してしまったりする。そして最後に筆箱の中の鉛筆を研ぎあげて終わるのである。終わって勉強が始まるわけではない。寝るのである。母にはあきれられたが、私としてはそれで「試験勉強した」ことになったのである。少なくても明日は嫌いな数学からやろう…位の心構えが育ってはいたのである。自分に甘い、自分への言い訳に過ぎないこともわかりながらである。そして、なんとか次の日から勉強に取り組めたのである。
 この習性はずっと続いた。研究授業や研究発表、職員会議の提案などやりたくないことをやらなければならないときは必ず「事前整理」「事前模様替え」が大なり小なり行われたように思う。
 今日は私の部屋の模様替えをした。何の事前でもない。必要に迫られたからである。
 この部屋は父が同居することになって増築した部分である。父が亡くなってから私が使っている。
 仏壇がある。6畳フローリングで収納がたくさんある。南に突き出すように建てたので日当たりもいいし、退職後DIYでウッドデッキも出したので快適な部屋になっている。パソコンや周辺機器、机、工作のための作業台がある。あれもやりたいこれも面白そうと手を出しているうちにいろんなものが集まって来た。しかし自分の好きなものに囲まれているから苦にならない。収納の扉や壁はカレンダーに印刷されたものであるが、棟方志功の作品で埋め尽くされている。
 しかし困ったことが起きてきた。我が家の本体は大手の建設会社が北海道で木造一般住宅に進出しようとしていたときなので結構がんばって建ててくれた。傾斜地だったため、低い所に合わせて土台を作ったので3M近い土台が作られていた。建つ前に見たときはそこに地下室を作りたいと思ったほどだ。ところが増築部分の吾が部屋は、埋め立ててしまった後で、重機を入れることは危険だったし、予算も無かったので埋め立てた柔らかい土地に通常の高さの土台しか作れなかった。本体も建てた大工に頼んだのだが、彼が「この土台だと何年か経ったら本体部分との接合部分が沈んできてしまうかも…」と言っていた。そして、それが現実になってきたのである。