岡村昭彦報道写真展

takasare2008-01-10

 「岡村昭彦の軌跡」と題して岡村昭彦氏の報道写真展がまちづくりセンター(旧丸井)で開かれている。ライフ誌の表紙を飾ったこともあるフォトジャーナリストの写真展が函館で開かれるのは、当別の男子修道院で働いたり、函館の書店の娘と最初の結婚をするなど縁が深いことによる。
 「圧倒された」。泥の中に数時間前まで生きていた死体が半ば埋まっている、ヴェトナム人がヴェトナム人を白昼、集落の路上で拷問している。その拷問に使われた水たまりをアヒルが飲んでいる。数時間後に殺されることを予感できていたのかどうか、澄んだ目の姉と弟が道端に座らされている。ドカドカと足音が聞こえそうなアメリカ兵の足元で、2歳くらいの男の子が迷彩服を見上げている。アメリカ兵は目もくれない。踏み潰されそうだ。
 家族も友達も希望も将来も命を奪うことで途絶えさせた人間。命を奪われることで途絶えることを知っていても喋らない人間。まるで一枚の紙の裏表の境界を写しだしているようだ。
 その一枚の紙はヴェトナム人だったのだ。だからアメリカはその紙に自分勝手な絵を描くことを許されなかったのだと思う。今、アメリカは同じ過ちを繰り返しているに過ぎない。
 会場を出、帰る前に久しぶりに旧丸井デパートのあの階段を登った。母のスカートに掴って「次の階にはどんな華やかな空間が待っているのだろう」と胸躍らせて見上げ、登って行った幼い日を急に思い出した。大理石の階段手すりの金属の飾りを見たとたんにである。あのアメリカ兵を見上げていた幼児は、今どうしているのだろう。
 もう一度その写真を見てから帰った。