亀川の川岸に生の営みを終えたホッチャレが投げ出されたように横たわっている。眼だけが食われている。虚ろな眼窩だからこそ何かを見ているように感じてしまう。カラスや鴎はそこが柔らかいから食うという。私には、見られるのが怖いからまずそこを食べてしまうのではないかと思う。その眼に降る雪が優しさに満ちていた。
  ホッチャレの空ろ眼に牡丹雪   未曉
 産卵を終えた鮭が流れに流される。のたうつように最後の力を振り絞って再び川上に頭を向ける。鮭はそこに留まるためにも泳がなければならない。
  終焉の河床へ鮭や頭向け     未曉
 地元の人しか知らないような「亀川」などという川で、産み落とされた卵。もう2、3粒流されているものがある。
  受精卵すでにはぐれて雪の川   未曉