雪掻き(3)

 函館に来て楽しかったのは勤務校での雪掻きである。最初の高丘小学校は道路から玄関までは距離が無かったし、児童玄関が一つしかなく、それも職員玄関と隣接していた。雪掻きを要する広さはそれほど無い。私はいろんな利点があって出勤は早い。いたん校舎に入って少ししてから、出勤してきた先生たちに合わせて玄関先に出て、登校してきた男子生徒と一緒にやっていた。やるとすぐ終わってしまった。
 2校目の昭和小学校は職員玄関前はもっと狭かった。いつものように開錠し、玄関においてある雪掻きシャベルで五分もかからずに終わってしまうほどである。しかし、その玄関は、来客と職員専用だが朝から来客もない。先生方は東西に長い校舎の両端にある駐車場から校舎に添って歩いてくる。児童玄関もその両端にあるので、自分の靴がある玄関へ校舎に添って歩くことになる。つまり、職員玄関前だけやってもなんの役にも立たないのである。
 その頃から、靴下を濡らしている子どもが多くなった。けっこう雪が積もっているのに短い足首までの靴しか履いてきていない。濡れるのは当たり前である。児童玄関に行って靴箱の外靴を調べると、可愛いけれど、雪が積もった日には役に立たないようなものがたくさん並んでいた。子どもたちに言うと「長靴は学校の靴箱に入らないもの」と言う。そんな問題ではないと思いつつそして、家庭の教育力の低下を嘆きつつも私は西玄関から東玄関へ東西に80mある校舎に沿って一本道の雪掻きを始めた。時間的にも労力的にもこれが限度だったし、通る子どもにしてみれば雪が靴に入らなければいいのだから役には立つだろうと考えた。そしてやってみるとシャベル一個分の幅の一本道これはこれで結構美しいのである。(続く)