新蕎麦の色で…(2)

 高橋邦弘さんの《蕎麦大全》によると、蕎麦の実は挽くと芯の部分から粉になり順に実の外側に向かって一番粉、二番粉、三番粉、四番粉(末粉)と挽きだされるそうである。一番粉は真っ白で二番粉、三番粉と言う風に薄茶色が濃くなり、四番粉は殻の砕片などが混じっていっそう濃くなることになる。通常蕎麦を打つときは二番粉、三番粉をブレンドして使うことが多いそうで、つなぎを使わない場合ではこれらが水分を含んだ状態が、蕎麦の色になるのであろう。
普通、私たちは麺に仕上がったものを蕎麦と言う。蕎麦粉自体も大きく4段階の色があるようだし、そのブレンドの割合でも麺の色は変わるだろう。仕上げる時に、お茶を練りこめば茶蕎麦となり色も変わる。卵蕎麦、ゴマ蕎麦などもある。また、つなぎに何を使うかでも変わり、ふのりをつなぎに使う新潟のヘギ蕎麦は緑色をしているし、ヤマゴボウの葉の繊維をつなぎに使った長野、冨倉集落のそばは黒っぽいそばだった。これに蕎麦粉の品種の違いや産地の微妙な違いを加えると「蕎麦の色」という設定自体がそもそもナンセンスなのである。私たちが昔真剣に話し合った「蕎麦の色」談義そもそもが若気の至りというか馬鹿げているテーマだったのである。蕎麦を蕎麦として食べるために、さらに美味しく食べるために様々に工夫開拓されてきた結果が今の「蕎麦」なのである。つまり蕎麦に決まった色は無いのである。(往々にして哲学は当たり前のことに落ち着くものだ…)
 でも、私はいつもより一段と緑の色合いが強くなったと感じられる新蕎麦を食べるのが好きである。その色を見ただけで香りも味も美味しくなる感じがしてしまう。そして新蕎麦に限らず、私が美味しいと思う蕎麦はその色合いの辺りに分布する。